整形外科の主な病気
骨折(上・下肢・脊椎)
骨が破綻することを骨折と言います。したがって、ヒビも骨折(ズレていない)ですし、骨の一部分が欠けたり、凹んだ場合も骨折です。骨折は骨に力がかかって発生します。健康な骨では、かなり大きな力がかからないと骨折しませんが、骨全体が弱っていると、弱い力でも骨折します(病的骨折)。
また、健康な骨に弱い力がかかる場合でも、同じ場所に繰り返し長期間かかり続けると疲労骨折することがあります。症状を確認し、X線写真を撮り、大概はこれで診断がつきますが、骨折の転位(ずれ)が無かったり、X線写真に写りにくい骨折の場合は、普通のX線写真だけではなかなか診断できないこともあります。そのような場合にはCT・MRI検査が役に立ちます。
治療はとしては、骨の中には生きた細胞があり、骨折しても治る能力を備えています。しかし、条件を整えないと、骨はつきません。また、折れた部位や折れ方によって骨のつきやすさに差があります。一般に、骨折部のズレが小さく、骨折部の動きが少なく、骨折部に元気な細胞が多ければ、骨折はつきやすいです。
この原則は手術する場合もしない場合も当てはまり、たとえばギプスで治す場合は、骨折部がグラグラしないようにギプスを作ります。手術する場合は皮膚を切開し、金属製の板や棒を用いて骨をとめてズレと動きを防ぎますが、骨折部の生きた細胞にも配慮して手術します。治療方法や骨癒合までの期間は、折れ方によってさまざまです。
ところで、骨折だけが治っても、その周囲が不健康になってはいけません。骨折部がグラグラしない限りは、その周囲の関節や筋肉は動かした方が良い場合が多く、必要以上の安静はよくなく、動かせるところはリハビリで動かしていきましょう。
捻挫・打撲
捻ってのケガを捻挫、ぶつけてのケガを打撲と言います。「日にち薬」で自然治癒するものもあれば、実は「骨折」や「靱帯損傷」が隠れており、初期治療を怠ったせいで、後遺症が残る場合もあります。痛みが強い場合や痛みが長引く場合は、なるべく早期に整形外科の受診をお勧めします。ケガは、早期発見が早期復帰の近道です。
腰痛
腰痛の多くは、腰椎に負担がかかることで発症しますが、様々な病気が背景になってることもあります。成長に伴って起こるもの(側弯症、腰椎分離症、先天異常など)、加齢によって起こるもの(椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、変性すべり症など)、腰椎の骨折や脱臼などの外傷、感染や炎症によるもの(カリエスや化膿性脊椎炎など)、転移癌などの腫瘍によるものなどがあります。精神的なストレスによるものもあります。
安静にしていても痛みが軽くならない、あるいは悪化する、発熱がある、足がしびれたり力が入らなかったりなどの症状を伴っている場合は、放置せずに整形外科の受診をお勧めします。
ぎっくり腰
突然起こる強い腰の痛みで、何かを持ち上げようとしたときや腰をねじる動作をしたときに起こることが多く、場合によっては動けなくなってしまうほどの激痛が現れます。痛みの原因は様々ですが、腰が動く関節部分や軟骨(椎間板)に許容以上の負荷がかかり、捻挫や椎間板損傷が生じる、腰の筋肉や腱・靱帯などの軟部組織の損傷、などが多いと考えられます。
腰椎椎間板ヘルニア
症状としては腰やでん部の痛み、下肢にしびれや痛みが生じます。足に力が入りにくくなることもあります。背骨が横に曲がってしまい、動きにくくなったり、重いものを持ち上げると強い痛みが出たりすることもあります。治療は強い痛みがある時期は、安静を心がけ、コルセットを装着します。消炎鎮痛剤、坐薬、神経ブロック(炎症を抑える薬剤の注射)などで痛みを緩和します。痛みが軽くなれば、牽引や運動療法を行うこともあります。最近では内視鏡による低侵襲手術も広く行われるようになっています。
五十肩(肩関節周囲炎)
中年以降、特に50歳代に多くみられます。関節を構成する部分(骨・軟骨・靭帯・腱)などが老化し、肩関節の周囲に炎症が起きることが原因と考えられています。
自然に治癒することもありますが、ときには日常生活に支障がでるばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。急性期にはまず安静を心がけ、消炎鎮痛剤の内服、肩への注射が有効です。急性期を過ぎてからはホットパックなどの温熱療法、また拘縮(こうしゅく)予防や筋肉を強化するための運動療法を行います。
肉離れ
肉離れとは、スポーツ活動や急激な動作などによって、筋肉や腱が部分的または完全に断裂してしまう損傷のことです。医学的には筋損傷、または筋挫傷とも呼ばれ、主に下肢、特にふくらはぎ(腓腹筋)や太もも(大腿四頭筋、ハムストリングス)に発生しやすいですが、腕や背中など、身体の様々な部位で起こり得ます。肉離れの症状は、損傷の程度によって異なり、一般的には、3段階(軽・中等・高度)に分類されます。多くの肉離れは保存療法(安静・アイシング・圧迫固定・消炎鎮痛剤・リハビリテーション)で治癒します。
腱鞘炎(けんしょうえん)
手首の母指(親指)側にある腱鞘(けんしょう)と、その部分を通過する腱に炎症が起こった状態をいいます。腱鞘のところでスムーズに腱が動かなくなり、手首の母指側が痛んだり、腫れたりします。母指を広げたり、動かしたりすると強く痛みます。主に手の使いすぎが原因で、スポーツや仕事で指を良く使う仕事の人に多いのが特徴です。